SAP製品

SAPとは?基本機能について解説

SAPとは?

SAP(エス・エー・ピー)とは、ドイツに本社を置くSAP社が開発・提供しているERPソフトウェアです。正式名称は「Systems, Applications and Products in Data Processing」で、1972年に創業された老舗のIT企業です。

ERPとは「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略で、日本語では「統合基幹業務システム」と訳されます。企業の会計、販売、購買、生産、人事など、さまざまな業務を一元的に管理・最適化するためのシステムです。

従来は部門ごとにバラバラのシステムを使っていたため、データのやりとりに手間がかかったり、二重入力や整合性の問題が起きやすい状況でした。ERPを導入することで、全社のデータがリアルタイムに連携され、業務効率や意思決定の精度が向上します。SAPは世界No1シェアを誇るERPシステムを提供している会社となります。

参考:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2019-2024

SAP ERPとは?

SAP社が提供するERP製品のことです。

ただし、SAP社といえばERP製品なので”SAP”という単語自体がERPパッケージとして使われることも多いです。

2025年現在の主力製品は「SAP S/4HANA」という製品ですが「SAP R/1」「SAP R/2」「SAP R/3」と歴史を歩んできました。日本企業ではR/3が普及しており、「SAP S/4 HANA」への移行を迫られています。

SAP導入のメリット

変化の激しい世の中で、ビジネスで勝ち抜くためにはSAPを導入するメリットが大いにあります。主なものを4つ挙げます。

  • 業務の標準化と効率化:業界ベストプラクティスに基づいた業務プロセスがテンプレート化されており、自社の業務を見直すきっかけになります。
  • リアルタイムな経営判断:データが即時に反映されるため、在庫状況、売上、利益などの指標をタイムリーに把握できます。
  • グローバル対応:多言語・多通貨に対応しており、海外拠点との連携にも強みがあります。
  • 拡張性と柔軟性:各種モジュールを組み合わせて、自社の業務に合ったシステム構成が可能です。

特にSAPでは世界標準で対応できるので世界中に展開している大企業は恩恵が大きいです。

SAP導入のデメリット

メリットもあれば当然デメリットもあります。4つの主なデメリットを挙げます。

  • コストが高い:ライセンス費用や導入・保守コストが高く、特に中小企業にとってはハードルが高い場合があります。
  • 導入に時間がかかる:要件定義から本番稼働まで、1年以上かかるケースも多いです。
  • 業務プロセスの見直しが必要:SAPの標準に業務を合わせる必要があるため、業務フローの変更が必要になることもあります。
  • 専門知識が必要:SAPの操作や設定には専門的な知識が求められ、社内にスキルを持つ人材を確保することが重要です。

なんと言っても高いというところが大きなデメリットになると思います。高くなる原因としては、ライセンス費用だけでなく導入+保守のために必要なSAP人材が不足しており確保するには高い報酬を出す必要がある点も大きいです。

*逆にいうと、SAPコンサルは高い報酬を獲得できるチャンスも多いです。

SAPの基本的な機能(モジュール一覧)

SAPは機能ごとに「モジュール」と呼ばれる単位で構成されています。代表的なモジュールは以下のとおりです。

モジュール名略称主な内容
財務会計FI仕訳、帳簿、決算、支払などの会計業務を管理
管理会計CO原価計算、部門別収益管理などの内部会計
販売管理SD受注、出荷、請求などの販売業務
購買管理MM発注、入庫、支払などの購買業務
生産管理PP生産計画、実績、在庫管理などの製造業務
人事管理HR従業員データ、給与などの人事業務

FI(財務会計)

FI (Financial Accounting) は社外向けの会計情報に特化しており、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書を正確に作成できるモジュールです。主要機能として以下が挙げられます:

  • 総勘定元帳(FI‑GL)
  • 債権管理(FI‑AR)
  • 債務管理(FI‑AP)
  • 固定資産会計(FI‑AA) など

外部ステークホルダー向けの報告に必要な決算処理の自動化、資金流の見える化、会計基準適合(IFRS等)もカバーします。また、他モジュールとの連携構築の中核的存在として、ERP全体の統合性を担保する役割も果たします。

CO(管理会計)

CO (Controlling) は社内向け管理会計に特化。利益分析やコスト管理を通じて経営判断を支援します。主な用途は以下です。

  • 製品原価管理(CO-PC)
  • 収益性分析(CO-PA)
  • 原価要素管理(CO‑OM‑CEL)など

このように、COはFIでまとめた財務データを社内分析用に変換し、ROIやKPIに基づいた意思決定をサポートします。

SD(販売管理)

SD (Sales and Distribution) は営業から出荷、請求まで販売プロセス全体を統括します。

  • 見積〜受注〜出荷〜請求の伝票処理
  • 契約・クレーム管理
  • バックオーダー対応など

顧客の注文状況や請求状況をリアルタイムに追跡し、FI/CO/MM/PPとの連携で在庫や生産計画にも反映される、業務プロセスの要となるモジュールです。

MM(在庫管理)

MM (Material Management) は資材購買から在庫管理までをカバーします。

  • 購買依頼・発注・入庫・請求書照合
  • 品目マスター管理
  • 在庫移動や在庫評価など

購買コストの透明化や在庫の可視化だけでなく、調達から生産・販売プロセスとの統合を支える重要モジュールです。

PP(生産計画・管理)

PP (Production Planning and Control) は製造業向けの生産計画・実行管理を担います:

  • MRPによる需要予測と資源計画
  • 製造指図の作成、製造実績の記録
  • 製品別コスト集計、生産性分析など

また在庫・購買(MM)、販売(SD)とも連動し、サプライチェーン全体の最適化に貢献します

HR(人事)

HR (Human Resources) は採用、勤怠、給与、育成などを統合管理します:

  • 基本人事情報
  • 勤務管理
  • 給与計算

一元的に人材管理をすることで、コンプライアンスの強化や、組織の最適な人材管理をすることができます。

まとめ

今回は、SAPとは何か、そしてその導入メリット・デメリット、主要なモジュールについて解説しました。

SAPは、企業の会計・販売・購買・生産・人事といった多岐にわたる業務を一元的に管理できる強力なERPシステムであり、特に大企業やグローバル展開企業にとっては大きな武器となります。

一方で、導入には高額なコストと専門知識が必要であるため、十分な計画と体制づくりが不可欠です。

各モジュール(FI, CO, SD, MM, PP, HR)はそれぞれが独立した役割を持ちつつ、相互に連携して企業全体の業務最適化に貢献します。

今後SAPの導入やキャリアを検討している方は、まずはこれらの基本モジュールの理解から始めてみるのがおすすめです!