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FIトランザクションコード一覧まとめ

SAP FI(財務会計)モジュールにおけるトランザクションコードは、日常的な会計業務を効率的に処理するための重要な要素です。本記事では、SAP FIの主要なトランザクションコードを体系的に整理し、実務に役立つ詳細情報を提供します。経験豊富なSAPコンサルタントや初心者の方まで、幅広いユーザーの業務効率化に貢献する内容となっています。

1. 勘定管理系トランザクションコード

総勘定元帳(G/L)勘定コードマスタ管理(FS00)

FS00は、SAP FIにおける最も基本的なトランザクションコードの一つです。総勘定元帳の勘定コードマスタレコードの作成、変更、照会を行うことができます。

主な機能と使用場面:

  • 新規勘定コードの登録
  • 既存勘定コードの詳細設定変更
  • 勘定コードの属性確認と照会
  • 転記キーとの連携設定

勘定コードマスタの設定項目には、勘定コードグループ、勘定コードタイプ、財務諸表項目、利益センター有効化フラグなど、会計処理に直接影響を与える重要な情報が含まれています。特に、自動転記設定や税コード連携の観点から、正確な設定が求められます。

勘定コード体系とFIでの重要性

SAP FIにおける勘定コード体系は、企業の会計処理の基盤となる重要な要素です。勘定コードは以下の観点から体系的に管理されています:

勘定コードの分類:

  • 貸借対照表勘定(資産、負債、資本)
  • 損益計算書勘定(収益、費用)
  • 統計勘定(分析目的)

FS00での重要設定項目:

  • 勘定管理領域での基本設定
  • 会社コード固有の設定
  • 自動消込や明細管理の設定

会計処理における勘定設定のポイント

効率的な会計処理を実現するためには、FS00での適切な勘定設定が不可欠です。以下のポイントを考慮した設定が重要です:

設定時の注意点:

  • 明細管理が必要な勘定(売掛金、買掛金等)の適切な設定
  • 自動消込機能の活用による作業効率化
  • 税コードとの連携設定による自動税計算の実現
  • ソート勘定の活用による財務諸表表示の最適化

2. ビジネスパートナー管理系トランザクションコード(FI会計処理観点)

得意先マスタのFI会計設定(FD01/FD02/FD03)

得意先マスタは売上債権管理の基盤となる重要なマスタデータです。

FD01(得意先登録)
新規得意先の登録を行います。FI会計の観点では、以下の設定が重要です:

  • 統制勘定の指定
  • 支払条件の設定
  • 与信限度額の設定
  • 税分類の指定

FD02(得意先変更)
既存の得意先マスタデータの変更を行います。支払条件の変更や与信限度額の調整など、取引条件の変更時に使用します。

FD03(得意先照会)
得意先マスタの詳細情報を照会します。取引前の与信状況確認や、会計処理時の設定内容確認に活用します。

仕入先マスタのFI会計設定(FK01/FK02/FK03)

仕入先マスタは買掛金管理と支払処理の基盤となります。

FK01(仕入先登録)
新規仕入先の登録時には以下の会計設定が重要です:

  • 統制勘定の適切な設定
  • 支払条件と支払方法の指定
  • 源泉徴収税の設定
  • 支払ブロックの管理設定

FK02(仕入先変更)
支払条件の変更や銀行情報の更新等、仕入先との取引条件変更時に使用します。

FK03(仕入先照会)
仕入先の詳細情報確認や支払状況の把握に活用します。

ビジネスパートナー統合管理と会計連携(BP)

BP(ビジネスパートナー統合管理)は、SAP S/4HANAにおける新しいビジネスパートナー管理機能です。従来の得意先・仕入先マスタを統合し、より効率的な管理を実現します。

BPの主要機能:

  • 得意先・仕入先の統合管理
  • 関係性管理の強化
  • 重複データの排除
  • グローバル企業での統一的な管理

銀行マスタと資金管理(FI01/FI02/FI03)

銀行マスタは支払処理と資金管理において重要な役割を果たします。

FI01(銀行登録)
新規銀行の登録では、以下の情報設定が重要です:

  • 銀行国コードと銀行コード
  • SWIFT コードの設定
  • 住所情報の正確な入力

FI02(銀行変更)
銀行情報の変更や追加情報の登録に使用します。

FI03(銀行照会)
銀行の詳細情報確認や、支払処理時の銀行情報検証に活用します。

3. 固定資産管理系トランザクションコード(FI-AA)

資産マスタ管理(AS01/AS02/AS03/AS05)

固定資産管理は企業の資産管理と減価償却計算の基盤となる重要な機能です。

AS01(資産マスタ登録)
新規固定資産の登録時には以下の設定が重要です:

  • 資産クラスの適切な選択
  • 減価償却領域の設定
  • 取得日と稼働開始日の正確な入力
  • 償却方法と耐用年数の設定

AS02(資産マスタ変更)
既存資産の情報変更や追加設定を行います。資産の移管や償却方法の変更等に使用します。

AS03(資産マスタ照会)
資産の詳細情報確認や償却状況の把握に活用します。

AS05(資産マスタブロック)
不要となった資産のブロック処理を行います。売却や廃棄前の処理として重要です。

資産取引処理(AB01/AB02/AB03/AB08)

AB01(資産取引登録)
固定資産に関する各種取引の登録を行います:

  • 取得処理
  • 減価償却の手動計上
  • 資産価値の調整
  • 資産の移管処理

AB02(資産取引変更)
登録済みの資産取引の修正を行います。

AB03(資産取引照会)
資産取引の詳細確認や処理状況の把握に使用します。

AB08(反対仕訳明細)
誤って処理した資産取引の取消処理を行います。会計処理の正確性確保に重要な機能です。

資産除却・売却処理(ABAON/ABAVN)

ABAON(売却資産(得意先無))
固定資産の売却処理を行います。売却価格と帳簿価額の差額は売却損益として自動計算されます。

ABAVN(廃棄による資産除却)
不要となった固定資産の廃棄処理を行います。廃棄損の計上と資産の除却を同時に処理します。

資産照会・償却分析(AW01N)

AW01N(資産エクスプローラ)
固定資産の包括的な分析と照会を行うことができる強力なツールです:

  • 資産の償却状況一覧表示
  • 期間別償却額の分析
  • 資産価値の推移確認
  • 複数の償却領域の比較分析

4. 会計伝票処理系トランザクションコード

基本的な会計伝票処理(FB01/FB02/FB03)

FB01(伝票登録)
会計伝票の新規作成と転記を行う最も基本的なトランザクションコードです:

  • 借方・貸方の仕訳入力
  • 税額の自動計算
  • 通貨換算の自動処理
  • 文書番号の自動採番

FB02(伝票変更)
転記済み会計伝票の変更可能項目を修正します。システム設定により変更可能な項目が制限されます。

FB03(伝票照会)
会計伝票の詳細確認を行います。伝票番号による検索や、各種条件での絞り込み検索が可能です。

消込処理と債権債務管理(FB05/FBRA)

FB05(消込転記)
売掛金・買掛金の消込処理を効率的に行うことができます:

  • 請求書と入金の消込
  • 前払金・前受金の消込
  • 複数伝票の一括消込
  • 部分消込の処理

FBRA(消込済明細再登録)
誤って消込処理を行った場合の取消処理を行います。消込の解除と同時に必要に応じて反対仕訳も自動作成されます。

反対仕訳処理(FB08)

FB08(反対仕訳)
誤って転記した会計伝票の取消処理を行います。元伝票と同額で借方・貸方を逆転させた反対仕訳を自動作成し、会計処理の正確性を保ちます。

未転記伝票管理(FBV0/FBV1/FBV2/FBV3)

未転記伝票機能は、承認フローや段階的な伝票作成に有効です。

FBV1(未転記伝票登録)
正式転記前の仮伝票を作成します。承認待ちの状態で保存することができます。

FBV2(未転記伝票変更)
未転記状態の伝票内容を修正します。

FBV3(未転記伝票照会)
未転記伝票の一覧確認や詳細照会を行います。

FBV0(未転記伝票転記)
承認済みの未転記伝票を正式に転記処理します。

5. 残高・明細照会系トランザクションコード

G/L勘定残高照会(FAGLB03/S_ALR_87012301)

FAGLB03(G/L勘定残高照会)
総勘定元帳の残高照会を行う新世代のトランザクションコードです:

  • リアルタイムでの残高表示
  • 期間比較分析
  • ドリルダウン機能による詳細確認
  • カスタマイズ可能な表示レイアウト

S_ALR_87012301(G/L勘定残高照会)
従来型の残高照会レポートです。定期的な残高確認や月次決算作業で活用されます。

債権債務残高照会(FD10N/FK10N)

FD10N(得意先残高照会)
得意先別の売掛金残高を詳細に確認できます:

  • 期日別残高の表示
  • 支払遅延分析
  • 与信限度額との比較
  • 通貨別残高表示

FK10N(仕入先残高照会)
仕入先別の買掛金残高と支払予定を管理できます:

  • 支払予定日別の残高表示
  • 支払条件による分析
  • 早期支払割引の管理
  • 支払保留の状況確認

会計明細照会機能(FBL3H/FAGLL03/FBL1H/FBL5H)

FBL3H(G/L勘定明細ブラウザ)
総勘定元帳の明細を効率的に照会できます:

  • 勘定科目別の伝票明細表示
  • 期間指定による絞り込み
  • ソート・フィルタ機能
  • Excel出力機能

FAGLL03(総勘定元帳明細(新))
S/4HANAで強化された新しい明細照会機能です。リアルタイム処理と高度な分析機能を提供します。

FBL1H(仕入先明細ブラウザ)
仕入先別の取引明細を詳細に確認できます。支払管理や取引履歴の確認に活用されます。

FBL5H(得意先明細ブラウザ)
得意先別の取引明細照会を行います。売掛金管理や与信管理に重要な情報を提供します。

資産残高照会(S_ALR_87011963)

S_ALR_87011963(資産残高照会)
固定資産の残高と償却状況を包括的に照会できるレポートです:

  • 資産クラス別の残高表示
  • 償却方法別の分析
  • 期間比較による増減分析
  • 税務・会計の償却差異分析

6. まとめ

SAP FIトランザクションコードの習得は、SAPシステムを活用した効率的な財務会計業務の実現に不可欠です。各コードの機能を理解し、業務に応じて適切に選択・活用することで、組織の会計処理品質と効率性を大幅に向上させていきましょう。